SD-WANに詳しくない人でも、分かりやすくコラム形式で特長/メリットをお伝えします。
様々なペット関連の商品を製造・販売する「秋田商会」。同社は、百貨店、専門店、量販店に納品するほか、関東を中心にいくつかの直営店を展開する企業。最近では、インターネットでも商品を販売している。同社を率いるワンマン社長は、常に新しい事業の展開を模索し、鼻息も荒い。しかし、ICT環境がそのスピードについていけず、最近ちょっとご機嫌斜めだ。そこにネットワーク管理を任されている担当者が、飛び込んできた。どうやら新しい解決策を見つけたらしい。
秋田社長
秋田商会
代表取締役社長
新しいモノ好き。新製品の発表会などに足を運ぶことには労を厭わない。一代で業界最大手グループを築き上げたヤリ手のワンマン社長。
柴君
秋田商会
情報システム部
現在の社内ネットワーク構築を主導した張本人で知識には自信がある。ネットワークの保守・運用も外部のベンダーと調整しながら、実質的に一人で切り盛りしている。
社長大変です! 私、ついに当社の課題に効果的ないい解決策を見つけてしまいました。
解決策? あぁ、最近起きてるITインフラ関連の問題か?
はい。社長、突然ですが、SD-WAN(Software-Defined WAN:ソフトウエアで定義されたWide Area Network)という言葉をご存知ですか。
えすでぃーワン? いやまったく知らん。
SD-WANはここ1〜2年で耳にするようになったキーワードなんです。言うなれば、物理的なネットワークの上に、ソフトウエアで制御する仮想的なネットワークを構築する技術です。
おぉ、なるほど! ってまったくわからん。ちゃんとわかるように説明せんか。まったくIT畑のヤツはブツブツ…
おっと、それは、失礼しました。要するに、これまでのように物理的な工事(ネットワークのケーブルやネットワーク機器の設置や設定など)をしなくても、コントロールパネル(Web画面)からいろんなネットワークの設定/制御ができちゃうんです。例えば、通信先や利用アプリケーションごとに、異なる通信経路やQoS(Quality of Service/ネットワーク上のサービス品質)を設定することも簡単にできます。
うーん、わかったような、やっぱりわからないような…。で、結局それが、うちの問題をどう解決できるというんだ?
結論でいえば、これまで抱えていたネットワークの「守り」と「攻め」の両方の問題を解決できそうです。
なるほど。で、まず「守り」というのは、クラウドメールを入れた後に頻発してる、通信がつながりづらい問題のことだな。
さすが、社長。その通りです。先日、当社は働き方改革の一環として、Office 365を入れましたよね。それ以降、「ネットワークが遅い」「画面がフリーズする」「Office 365にアクセスできない」といったクレームが出てきています。
そうだ。私もこの前、自宅からメールを確認しようとしたら、なかなかつながらなくてな。
その点、SD-WANを使えば、通信経路を仮想的に分割できます。つまり、Office 365とそれ以外の通信を分離できるわけです。これまでのネットワークなら、この問題を解消するためにWANの通信帯域、簡単に言えば車(データ)が通る道路自体を拡張しなければならず、コストがかかるのですが、それをしなくても済むのです。
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現在では多くの企業がMicrosoft Office 365のようなクラウドサービスを利用している。ここで頻発するようになっているのが、ネットワークのトラブルだ。その原因は通信経路が変わったことにあることが多い。社内のオンプレミス環境で利用していたアプリケーションを、Office 365 のようなクラウドサービスへ移行することで、今まで介在しなかったファイアウォールやプロキシサーバーを経由した通信が大量に発生。そのため、従来のネットワークでは問題にならなかった箇所が新たなボトルネックとなり、遅延や接続ができない、画面がフリーズするなどのトラブルが発生するわけだ。拠点が複数あり、本社にインターネットへの出口があり、通信が一極集中するような企業の場合は、問題はより顕著に表れる。
このような状況はクラウドサービスの利用にとどまらない。例えばWindows 10への移行はその1つ。頻繁に発生するWindows Updateの通信に悩んでいる企業は少なくない。こうしたネットワークトラブルをSD-WANならコストや手間をかけずに解決できる。
で、「攻め」のメリットはどうなんだ? 私はむしろそちらの方に興味があるんだが。
そちらはまず拠点開設が比較的、簡単にできるようになります。この前、大河ドラマにあやかって、南九州に直営店を作ろうという話がでたじゃないですか。
あーそうだ! 拠点開通に1カ月はかかると言われて、私が激怒したやつだな。
結局、時期尚早ということで見送られましたが、物理ネットワークの引き込みには機器の設置などでそれなりに時間がかかってしまうものなのです。我々だけでなく、いろいろなベンダーの工事作業が必要になりますから。
それが、短くなるのか?
はい。もちろん、ネットワーク環境に限って言えばですが。
で、どれくらいになるんだ?
まぁ。そう急かさずに。例えばNTTPCコミュニケーションズ(以下、NTTPC)が提供する「Master'sONE CloudWAN セキュアパッケージ」なら専用のエッジ装置を設置し、既存のアクセス回線に接続するだけで済むので、拠点開通は最短2営業日で完了。さらに、ネットワークの変更ならこれまで数週間かかっていたものが、わずか5分で完了します※。
※NTT東日本・NTT西日本の「フレッツ」が既に敷設済みの場合に限る
なに? 新規拠点の開設が最短で2営業日で、変更がたったの5分? これまでの話はなんだったんだ?
そう思いますよね。私もさすがにびっくりしました。しかも、利用開始に必要な各種設定は、すべて先ほど話したコントロールパネル(Web画面)からリモートで行えるんです。これでわざわざネットワーク設定のために、現地に行かなくても済みます!
そうだな! その分、他の仕事ができるじゃないか。
はい。ネットワークの運用・保守担当は社内に私一人しかおらず時間が取れませんでしたが、これからは効率的に運用できるので、新事業へのIT利活用などに割ける時間ができそうです。それに、SD-WANなら「拠点ごと」に「アプリケーション種別ごと」の通信量が、グラフィカルに表示できることも大きなポイントになりそうです。最近いくつかの拠点で、実験的にWEB会議を使いはじめましたよね。そんな時も「今」「どの拠点」が動画を多用しているのかもわかるし、それが全体のネットワークに影響しているようなら、すぐに対策を講じることができるのです。
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最近、情報システム部門に寄せられるリクエストの1つ。それは、IT利活用の戦略的な支援だ。しかし、それに応えるにはハードルも高かった。従来型のネットワーク保守・運用には様々な手間がかかるため、安定的に運用するには時間や労力を割く必要があったからだ。しかもネットワークの専任者がいるわけではなく、兼任者だったりするような実質「ひとり情シス」であれば、なおさらだろう。ただ、それがユーザーの不満やシャドーITを招く大きな要因となっていたことも事実だ。
クラウド時代、経営層は「守り」だけでなく、「攻め」も行える戦略的な情シス部門を求めている。SD-WANなら、ネットワークに関するトラブルを減少させるだけでなく、ネットワーク運用を効率的に行えるようになる。こうして運用・負荷が削減できれば、もっと経営層やビジネス部門が望んでいるビジネスに絡むIT支援業務に携われるようになるだろう。SD-WANは、リソース不足に悩むひとり情シスにこそ有効な、全社が自由にITツールを使いこなすためのプラットフォームとなり得るのである。
すごいなぁ。SD-WAN。いいことずくめじゃないか。
そうなんです。すでに海外ではいろんな企業がSD-WANを使っています。国内でも大手製造業が2,800拠点に採用を決定して、話題を集めましたね。
でも、待てよ。結局、裏がありそうな…。あ、わかった。結局高いんだろう。大企業しか使えないくらいに。きっとそうだ。そうに違いない。そうに決まっている!
確かにニュースになるのは大企業や先進企業なので、そう思われがちなのですが、違うんです。すでに我々のような中堅・中小企業が手の届くサービスも登場しているんです。
本当だろうな?
そうしたサービスの代表例ともいえるのが、Master'sONE CloudWAN セキュアパッケージです。これはアクセス回線に「フレッツ」を用いたサービスで初期費は0円、拠点ごとの月額料金は19,000円(税込20,900円)、インターネットへのオフロード(システムの負荷を軽減するための仕組み)は契約企業ごとに30,000円(税込33,000円)です。うちだと、本社や事業所、直営店をあわせて10拠点なので、全部入れても220,000円(税込232,000円)です。もちろん主要拠点だけなら、100,000円(税込110,000円)程度ですかね。
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海外発のSD-WANのほとんどが、実はインターネットの利用を前提にしている。日本企業では、これが導入のハードルになりやすい。その点「Master'sONE CloudWAN セキュアパッケージ」は、NTTPCが提供する閉域上でSD-WAN機能が利用できる。また、本文でも紹介したように、アクセス回線としては、現在ほとんどの日本企業が利用している「フレッツ」をそのまま利用可能だ。各拠点に設置されたエッジ装置間はNTTPCの閉域網で通信を行い、エッジ装置とインターネットとの通信は閉域網の中に設置されたゲートウエイ経由で行うようになっている。
このようなサービスは、国内VPNサービス市場で初だという(株式会社MM総研2018年5月28日調べ)。また「フレッツ」光ネクストの機能であるIPv6 IPoE(IP over Ethernet)にも対応。そのため従来のエントリーサービスに比べて低遅延で安定した通信を行うことが可能になっている。